2012年7月4日水曜日

マンションでのペット規制





Q:分譲マンションに住んでいます。居室内で猫を飼っていましたが、先日、管理組合より、ペット飼育が禁止になりましたとの連絡を受けました。管理組合の総会でマンションの使用細則が変更され、ペット飼育が禁止になったとのことです。一方的に変更されたことに不満がありますが、この連絡には従わなければならないのでしょうか?

A:
【マンションの使用に関する規則:管理規約と使用細則】
マンションには民法、区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)等の法律による規制と、そのマンションの管理組合が定める管理規約、使用細則等による規制があります。

マンションには共用部分と専有部分があり、マンションの利用をどのように規制できるかは共用部分と専有部分で要件が異なる場合があります。

マンションの管理規約の変更は、管理組合総会の特別決議事項(議決権の4分の3の賛成が必要)ですが、使用細則の変更は、総会の普通決議事項(議決権の過半数の賛成が必要)とされるのが通常です。

【共用部分の使用に関する規制】
建物の共用部分や区分所有者全員の共有の敷地や付属施設の使用方法の多くについては、元来、それらの「管理の含まれる事項」として、総会の普通決議で決することができます(区分所有法第18条、第21条)。

したがって、共用部分や共有の敷地や付属施設についての使用規制は、使用細則で幅広く定めることができます。

【専有部分の使用に関する規制】
これに対し、専有部分は本来それぞれの所有者が、その区分所有権に基づき自由に使用および収益すべきものですから(民法第206条参照)、専有部分については、「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」(区分所有法第6条第1項)を除き、元来、それぞれの所有者が自由に使用することができるのが原則です。

したがって、専有部分(敷地が分有である場合は敷地も含む)の使用に関して規制する場合は、規約に定めをおくことが必要であり、また規制できる事項も、区分所有者間相互において専有部分の管理又は使用を調整するために必要な事項に限られることになります(法第30条第1項)。

ただ規約で基本的な事項を定め、その範囲内での細則の決定を総会の普通決議に委ねることは、相当の範囲内において許されるものと解されています。

【ペットの飼育規制】
犬、猫等のペット飼育規制、ピアノ等の楽器の演奏時間の制限、専有部分の大規模な修繕・改修等の専有部分の使用に関する規制を規定する場合は、それらについての基本的事項を規約で定める必要があります。

国土交通省が定めるマンションの標準管理規約のコメントでも、『犬、猫等のペットの飼育に関しては、それを認める、認めない等の規定は規約で定めるべき事項である。基本的な事項を規約で定め、手続き等の細部の規定を使用細則等に委ねることは可能である。』とされています(標準管理規約・コメントp36)。

標準管理規約・コメント(国土交通省HP)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/mansei/kiyakutantou.pdf

【ご質問の事例の場合】
ご質問の事例では、ペットの飼育の規制を使用細則に定めているのですが、これは有効な規制とはいえません。改めて管理組合総会を開催し、ペット飼育を禁じる旨を規約の中に盛り込むことが必要です。前述のとおり、そのためには総会の特別決議が必要です。

なお、実際には、マンションにおけるペットの飼育の問題は、規約等に定めたことだけで解決するわけではありません。地域猫問題と同様に、住民同士の話し合いを重ねることで、問題意識を共有し、それぞれのマンションの実情に即したルールを作っていくことが必要です。

地域猫問題に関する当ブログの記事
http://petlawtokyo.blogspot.jp/2012/05/blog-post_6509.html


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